早めに宿を引き払い、7時58分の大館行きの列車に乗る。こんなに早く出るのも前日青森から西に向かって弘前に泊まったのも、実は、この日に秋田内陸縦貫鉄道に乗りたかったがため(弘前で街をぶらつく余裕ぐらいはあるかとも思ったが、列車ダイヤの都合で断念せざるをえなかった)。説明が遅くなったが、東北旅行は山形・福島が8年ぶり、岩手・秋田となると21年ぶり(北海道への旅程のため、青森、仙台で途中下車したのは除く)。秋田内陸鉄道は21年前は国鉄阿仁合線といった。当時は鷹巣から比立内までのいわゆる盲腸線で、確か10年ほど前だったと思うが、角館から松葉までのやはり盲腸線国鉄松葉線とつながり、3セク鉄道として再出発した路線(詳しくは、同鉄道のホームページhttp://www.akita-nairiku.com/をご覧下さい。上の家のアイコンからいけるようになっています)。21年前は松葉線には乗ることができなかったのだが、鷹巣から比立内、新しくつながった路線で松葉を経由して角館まで、地方線の風情をもう一度味わいたいなという気持ちがだんだん湧き上がってきたのだった。

 大館からは、花輪線の列車秋田行きに連絡。1時間30分ほどの列車待ち。駅でぼさっと座っていてもしょうがないので、この時間内でいけるところまで街を歩いてみよう。駅をでて東に向かう。やはり国鉄から分離され、今は貨物だけ走っている小坂鉄道の踏切を越える。商店街らしいが寂れた感じ。それでも歩いているとだんだん街らしくなってきて、どうやら駅の方が外れにある感じ。当地は忠犬ハチ公のふるさととかで、あちこちに「ハチ公特売日」などというのぼりが立っている。30分ほど、市役所近くまで行って引き返す。この日は快晴。ちょっとでも日焼けしたかな。

 鷹巣までは数駅。ここで内陸鉄道の列車が出るまでまた30分ほど。この東北の旅で痛感したが、非常に列車の便が悪い。それだけの需要がないからかも知れないが。乗り込んだ列車は1両編成。ほぼ満員だったが、男子高校生ひとりと私を除くとあとは皆じいちゃんばあちゃんばかり。ワンマンカーで山と谷ばかりの景色の中を進んでいく。21年前乗ったときは夜だったので、景色は味わえなかった。途中、いくつかの駅で乗客が乗り降りしていくが、やはりお年寄りが比較的多い。それでも車内ががらすきになるということもなく、生活路線として地元の貴重な足になっているという印象を持った。2時間30分ほどの乗車、角館着(角館に行った、というと「憧れの街。きれいなねえちゃんにでも会わなかったの?」という問いがあったのでひとつだけ。この日は高校の試験中なのか、この時間帯、米内沢駅から乗り込んできた女子高校生が、ちょっと田舎ではかわいい方でちやほやされてしまったがためにませてしまって色気づいてしまったという感じで、向かいの長いすに座ったのだが、これがスカートの丈が意識的に短く、座り直したり連れの男と戯れたりするたびに目のやり場に困った。都会だったら「何見てんだよ!このエロおやじ!」と罵声を浴びせられただろう=本当に余談でした)。

角館も21年ぶり。駅からの道筋はすでに忘れてしまっていたが、武家屋敷が並ぶ城下町のたたずまいは健在。河原田家(武家屋敷資料館)と青柳家を見学。青柳家内で稲庭うどんをいただく。桧木内川沿いも散策。今度ぜひもう一度、桜が咲き競う春に来てみたいものだ。

 行ったことがないところに行く、よりも21年前の足跡を感傷的にたどるという方へ比重が移り、この日は平泉に泊まることにした。秋田新幹線田沢湖線)から東北新幹線、北上から在来線。夕方16時すぎると平泉駅でも無人になるというのには驚いた。予約を入れたホテルは温泉宿。「平泉に温泉なんて出てたっけ」と疑問に思うと、どうやらここ10年ほどの間に掘り当てて併設のクアハウスとともに新しく建てられたようだ。洋室2食付きで8000円。田んぼの中で、蛙の鳴き声がにぎやか。